
はじめに|「話してもいい」空気が満ちた二日間
2025年11月28日〜29日、佐賀県鳥栖市の サンメッセ鳥栖 で開催された「ひきこもり・不登校を考える講演会・対話プログラム」 に参加しました。
主催は鳥栖市社会福祉協議会。
登壇者は、
- 林 恭子 氏(ひきこもりUX会議 共同代表)
- 石川 良子 氏(立教大学 社会学部)
- 斎藤 環 氏(精神科医)
- 当事者・経験者の方々
という、全国的にもトップクラスの顔ぶれです。
会場には当事者、家族、支援関係者、教育関係者、地域住民など多様な人たちが集まり、とても温かく、誰もが安心して参加できる空気に包まれていました。
特に印象的だったのは、女性当事者の参加が予想以上に多かったこと。
「語ってもいい」「存在していい」という雰囲気が広がっている証だと感じました。
【1日目】講演とパネルディスカッション
多様な視点が交差する、濃密な時間
1日目は、支援の基礎から当事者性、家族支援まで幅広く学べる構成でした。
▼ プログラム
- 基調講演
- 当事者の語り
- パネルディスカッション
- 質疑応答
一方的に話を聞くだけでなく、「当事者性・研究・支援実践」が自然につながるように組まれており、とても学びの深いプログラムでした。
講演から見えた重要な視点
ひきこもりは“生きるための行為”
講演のキーワードとして何度も登場したのが、この視点です。
- 傷つきの経験
- 過剰適応
- 管理的教育
- 家庭内の緊張
- 社会からの孤立
ひきこもりは、そのすべてを受け止めた結果としての「生き延びるための行為」という説明が、とても腑に落ちました。
支援者や家族が「良かれと思っての言葉」が、“生き延びるための行為” を妨げてしまう可能性があるという指摘も印象的でした。
ターニングポイントとは、諭されて起きるものではない
どの体験談にも共通していたのは、変化は「説得」では起きないということでした。
- 偏見のないまなざし
- 「話しても安全だ」と思える関係
そうした出来事が重なった時、人はふと動き始める。
この感覚は、私自身の経験にも重なるものがあり、とても納得のいく内容でした。
ガソリンの切れた車:当事者の状態を表す比喩
「ガソリンが切れた車」の例えは、多くの参加者の心に残っていました。
- エネルギーは“一滴ずつ”しかたまらない
- しかし無くなるのは一瞬
- 動けない時は“怠け”ではなく“ガソリン不足”
この比喩は、家族や支援者の視点をやさしく変える、とても説得力のある表現でした。
安全圏を“広げる”支援へ
講演では、「支援の方向性」についても明確に示されました。
従来のように「外に出す」「社会に戻す」ことを目標にするのではなく、安心できる場所や人を少しずつ増やし、“安全圏”を広げることが大切。
行ける場所がひとつ増えるだけで、回復のプロセスは大きく変わります。
履歴書の空白=人生の空白ではない
社会では「空白期間」とされがちな時間も、
実際には
- ままならなさとの格闘
- 生き延びるために、とらざるを得なかった手段
- 自分との対話
が積み重なった大切な時間です。
この視点が広がれば、当事者が背負う「社会的な重さ」は大きく減るはずです。
家族が陥りやすいNG行動
講演では家族の関わりについての言及も多くありました。
▼ NGになりやすい関わり
- 比較
- プレッシャー
- 励ましすぎ
- 将来を迫る
- 心配を“ぶつける”
- 無意識の価値観の押し付け
本人はすでに自分を強く責めています。さらに責め立てる行為は逆効果だと触れていました。
その状態で外側からの圧力を加えると、エネルギーはさらに削られてしまいます。結果、「自律」にも「自立」にも程遠い状態となってしまいます。
家族ができること
印象的だったのは、「本人が嫌がっていることをやめること」が、家族にできる最大の支援という、とてもシンプルで本質的な視点でした。
家族会が“家庭で余計なひとことを言わないための発散の場”になるという考え方も深く共感しました。
困難ケースの視点(ゲーム・暴力)
ゲーム依存:
→ やめさせることが目的化すると対話にならない
→ 楽しむ力を育てることが優先
→ゲームすら楽しめなくなったら深刻
暴力:
→ 家族に背負い込ませず、避難・通報・拒否が基本
→ 「見放される恐怖」を本人も理解している
支援者にも家族にも、現実的で心強い内容でした。
【2日目】対話実践プログラム

「変えようとしない」から対話は始まる
二日目は、さまざまな対話を“体験する”時間でした。
▼ プログラム
- ひきこもり体験談
- 斎藤環さんのリフレクティング
- 石川良子さんの「良子の部屋」
- ひきこもり女子会 / 対話交流会「
講師の姿勢がとても印象的で、
- まとめようとしない
- 否定しない
- 評価しない
- 結論を求めない
- 「わからない」をそのまま扱う
という、“変えようとしない聞き方”が全体に流れていました。
▼ とくに心に残った学び
- 深い話をしなくていい
- 雑談のような会話の“量”が関係を育てる
- 続いている関係自体が回復を支える
これは家族会・居場所だけでなく、日常のあらゆる場面で使える支援の基礎だと感じました。
二日間を通して感じたこと
支援は「正しさ」ではなく「温かいまなざし」
二日間のイベントは、専門的でありながら、とても人間的で温かい時間でした。
- 当事者が安心して発言できる空気
- 家族と支援者が同じテーブルで学ぶ経験
- 女性当事者の参加の多さ
- 研究・支援・当事者性が自然に混ざり合う場
- 誰かが涙すると、会場全体が優しい雰囲気に包まれた瞬間
- 休憩時間に自然と生まれた対話
そして何よりも、
ひぎこもりにならない社会ではなく
ひきこもりになっても生きていける社会をつくること。
このメッセージが、二日間の真ん中にあり続けたと思います。
まとめ
鳥栖市での講演会は、ひきこもり・不登校支援の本質を深く掘り下げる貴重な時間でした。
今回学んだ視点は、どれもNienteの家族会や居場所づくりと深くつながっています。
- 生きるための行為
- 安全圏を広げる
- 空白期間は“人生の積み重ね”
- 変えようとしない対話
- 家族がNGをやめることの意味
これらを土台に、これからも福岡で実践を続けていきます。


