第4回「訳があって外に出れない人の居場所」の活動報告

この記事は約4分で読めます。

ひきこもり当事者が教えてくれたこと

それは、彼らには独自の力と多様なニーズがあり、そして、何より人との繋がりを望んでいるという事実です。

この記事では、4回にわたるひきこもり当事者会で、どのように参加者や運営者自身が成長しているのかを紹介します。

1. 活動内容と結果

通常は複数人でコーヒーを飲みながら様々なテーマに沿った話をする形式の「Niente」ですが、今回は参加者が1名だったため、フレキシブルにその方が自由に話せるように内容を変更しました。

この変更により参加者の話をより深く聞き出すことができました。第2回目から継続して参加している当事者は、初めて会ったときにはウェブライター業や小説家を志していました。その後の会に参加するにつれて、ボランティア活動を始めるなど、他者との交流が増えました。

そして何よりも驚いたのは、その方の表情に生まれた変化です。視線が明るく、口元からはエネルギーを感じることができました。

また、自己理解が深まっている印象を受けました。初対面の頃と比べて、自分自身で「人生において何を重視し、その生き方にはどのようなリスクがあるのか」をより具体的に語るようになりました。

2. 良かった点

最も印象に残った良い点は、参加者の「表情の変化」でした。

今回特に変わったのは髪がより整えられていた点、視線に力があったこと、そして口元が明るく上がっていたことです。これらの変化は、日常生活におけるポジティブな変化が表れたものと考えられます。表情の変化は第一印象を大きく向上させたと感じます。

具体的なエピソードとしては、参加者が自分で新しい社会活動の場を見つけ、そこで居場所を確立したことがあります。個人情報にあたるので活動の内容は伏せますが、多くの人との交流があり、その中で気の合う仲間も見つかったようです。特に、「ありがとう」と言われる瞬間があり、それが自信につながっているようでした。

このように、参加者自身が行動を起こし、自らの居場所を作り出した点は非常に素晴らしい成果と言えるでしょう。

また、参加者自身が活動を通して「自分は人と話すことが好きだ」という気づきがあり、これはNienteにとっても大きな学びとなりました。

3. 課題点

Nienteがこれまでに取り組んできた課題は、「より多くの人に知ってもらうこと」や「専門知識が不足している点をどうカバーするか」などがありました。しかし、今回の会で気づいた新たな課題は、「活動や交流に積極的な当事者に対して、どう応えられるか」という点です。

具体例としては、今回の参加者が「もっと人と交流したい」というニーズを持っていたにも関わらず、当事者会が提供するプログラムはそのような多様なニーズに応えられていない状態でした。特に、交流が苦手な人に合わせた内容が多く、積極的な人には物足りない可能性があります。

この課題が未解決のままでは、積極性や多様なニーズを持つ当事者を満足させることができない可能性が高くなります。

4. 課題に対する対策

前述の課題の対策として「Niente料理部」を発足させる決断をしました。

「料理部」では、参加者たちが手を動かしながら会話を楽しむという新たな形式を採用します。具体的には、毎月一度、ワクワクするようなレシピを用意して、参加者全員で料理をしながら自由に話す時間を作ります。これにより、会話だけではなく、手を動かすことで気が楽になり、自然体で話せる環境を作ることができます。

この活動に参加することで、一人暮らしの人には基本的な料理スキルを習得する機会があります。また、料理が好きな人は自分自身のレシピやテクニックを披露する場となります。料理に興味はなくとも、人との交流を求める人にとっては新しい形でのコミュニケーションの場が提供されます。

5. まとめ

今回の当事者会から多くの学びがありました。もちろん、課題も明らかになりましたが、新しい方向性も見えてきました。その中で一つ重要な気づきがありました。それは「人それぞれ違うニーズに柔軟に応えられる場を提供すること」です。この考えを具現化するために発足したのが「Niente料理部」です。

料理部が始まっても、Nienteの基本理念は変わりません。「誰からも否定されない」場所であり、「何も強制されない」場所であるという理念はそのままです。料理が得意であろうと不得意であろうと、人と話すのが好きであろうと苦手であろうと、自分らしく参加できる場所を作りたいと考えています。

新しい試みには期待と同時に課題も存在しますが、それらを乗り越えてさらなる進化を遂げたいと前向きに思っています。