Nienteの3カ年計画をつくる理由
Nienteはこれまで、ひきこもり当事者の居場所づくりや家族会を中心に活動してきました。
その中で強く感じてきたのは、目の前の本人や家族を丁寧に支えることの大切さと同時に、支援が特定の人や団体に集中しやすいという課題です。
ひきこもり支援は、一人の熱意や経験だけで支え続けられるものではありません。だからこそ今後は、実践を積み重ねながら、その蓄積を地域と共有し、持続可能な地域モデルへと育てていく必要があると考えています。
この3カ年計画は、Nienteの活動を単に広げるための計画ではありません。
居場所と家族会を土台にしながら、地域の支援力を少しずつ高めていくための計画です。

スローガン
尊重から始まる地域連携
Nienteの3カ年計画のキーワードは、「尊重から始まる地域連携」です。
ひきこもり支援には、本人、家族、行政、福祉、医療、地域の支援機関など、さまざまな立場の人が関わります。その中で必要なのは、誰かに正論を押しつけることではなく、それぞれの立場や役割を尊重しながら関係を育てていくことだと考えています。
Nienteは、誰かを批判したり、役割を奪ったりするのではなく、民間だからこそできる柔軟なオーダーメイド型支援を積み重ね、そのデータを地域に還元して行きます。
ビジョン
ひきこもりになっても安心して暮らせる地域をつくる
Nienteが目指しているのは、支援の主体が誰であるかではなく、本人や家族にとって安心して相談でき、自分に合った支援につながれる地域です。
ひきこもり状態にある人や、その家族は、相談先が分からなかったり、相談しても十分に受け止めてもらえなかったり、支援につながるまでに長い時間がかかったりすることがあります。また、支援につながった後も、本人のペースに合わない関わりによって関係が壊れてしまうこともあります。
Nienteは、そうした状況を少しでも減らし、安心して暮らし続けられる地域の土台を育てたいと考えています。
中期ビジョン(3ヵ年計画)
これまで属人的に行われてきた支援を、持続可能な地域モデルへ転換する
Nienteの中期ビジョンは、属人的に行われてきた支援を、持続可能な地域モデルへ転換することです。
これまでの支援は、どうしても代表者一人の経験や関係性、熱意に依存しやすい側面がありました。それは立ち上げ期の活動として自然な面もありますが、長期的に見ると大きな限界があります。
代表者が動けなくなったときに止まってしまう支援では、地域の仕組みにはなりません。だからこそ、居場所や家族会の実践を大切にしながら、そこから見えてきたことを地域で共有し、再現可能で続いていく支援の形へと育てていきます。

Nienteの中核活動
Nienteの中心にある活動は、居場所と家族会です。
1.居場所
居場所の役割は、単に集まる場所を提供することではありません。人との関係を少しずつ取り戻し、孤立をやわらげ、安心して過ごせる時間を重ねる中で、気力を回復していくことに大きな意味があります。
何かがすぐにできるようになることよりも、まずは「ここなら行ける」「ここなら話せる」「ここなら無理をしなくてよい」と感じられることが重要です。Nienteは、そのような安心の土台をつくることを最も大切にしています。
2.家族会
もう一つの中核活動が、家族会です。
ひきこもりの状態は、本人だけでなく家族も孤立しやすい課題です。家族はどう関わればよいのか分からず、不安や焦り、疲れを抱えながら日々を過ごしていることが少なくありません。
Nienteの家族会では、家族を責めたり、追い詰めたりするのではなく、まずは安心して話せることを大切にしています。経験や悩みを共有しながら、家族自身が気力を取り戻し、孤立せずに支援につながり続けられる関係を育てていきます。

活動の最優先事項
Nienteが最も大切にしているのは、目の前の当事者や家族を大切に扱い、気力を取り戻すことです。
地域連携や仕組みづくり、モデル化といった言葉は重要ですが、それらが目的化してしまうと、目の前の人が置き去りになる危険があります。
Nienteは、あくまで居場所と家族会を土台にし、目の前の本人や家族の困りごとや気持ちに丁寧に向き合うことを最優先にします。3カ年計画も、その土台の上に成り立つものです。
支援のスタンス
広く浅くではなく、見えている支援ニーズに確実に応える
Nienteは、広く多くの人に一律に届く支援を担う団体ではありません。
当団体に相談につながり、困りごとや支援ニーズを把握している本人や家族に対して、一人ひとりの状況に合わせたオーダーメイド型の支援を目指します。制度や仕組みに合わせて画一的に対応するのではなく、それぞれの背景やペースを尊重しながら、着実に困りごとの解消につなげていきます。
その結果として、支援できる人数は限られるかもしれません。しかし、見えているニーズを深く支えることが、最終的には地域全体の支援力を高めることにつながると考えています。
地域の支援団体との関係
福岡県には、法人化した支援団体や専門機関など、それぞれ重要な役割を担っている団体があります。そうした団体は、持続的な運営のために、支援対象を広く持ち、多くの人に届く支援を担っていることが多いと思います。
一方で、その仕組みの中では、個別事情への深い関わり、長期的な関係づくり、制度の枠に収まりにくい相談への対応などが難しい場合もあります。
Nienteは、そうした部分を補う役割を担いたいと考えています。これは競争ではありません。
それぞれの役割を持ち、足りない部分を補い合うことこそ連携だと考えています。
Nienteは、将来の連携先が苦手とする部分を担う団体でありたいと思っています。
行政との関係
Nienteの活動は、行政を批判したり、直ちに制度化を求めたりすることを目的としたものではありません。
ひきこもりは、福祉、医療、就労、家族支援など複数の分野にまたがる地域の課題です。市の政策として位置づけたり継続的な仕組みにしたりすることには、多くの調整や意思決定が必要です。その難しさは、私たちも理解しています。
その一方で、現場の実践を積み重ねることで初めて見えてくる課題や工夫もあります。Nienteは、居場所や家族会を継続し、活動内容や得られた知見を関係機関と共有しながら、行政が制作に反映できると判断できるだけの実績を丁寧に積み重ねていきたいと考えています。
春日市は、市報などによる広報協力をはじめ、活動を応援していただいてきた経緯があります。その関係性を大切にしながら、民間だからこそできる実践を積み重ね、地域の支援力向上に貢献していきます。
現状認識
地域の状況(外的要因)
春日市および周辺地域では、ひきこもり支援に関わる相談機関や支援機関が存在しています。一方で、本人や家族の状況は多様であり、既存の制度や支援だけでは十分に対応が難しいケースもあります。
そのため、行政、支援機関、民間団体など、さまざまな主体が役割を補い合いながら支援していくことが重要です。
初期対応に関する課題
ひきこもりの相談では、
- どこに相談すればよいか分かりにくい
- 家族が疲弊し、孤立しやすい
- 支援につながるまでに時間がかかる
- 本人が支援を望まないケースがある
といった状況が生じることがあります。
社会参加の段階における課題
ひきこもり状態から社会参加へ向かう過程では、
- 居場所には参加できるが、その次の段階に進みにくい
- 就労以降や就労支援までに至るまでの距離が大きい
- 本人たちの社会参加の準備段階が不足している
といった課題があります。
団体の現状(内的要因)
Nienteのこれまでの活動を通して見えてきた団体の特徴と課題を整理します。
活動の強み
- 当事者経験に基づく支援視点があること
- 居場所と家族会を継続して運営していること
- 小規模団体として柔軟な対応ができること
- 地域との関係が築かれ始めていること
- 継続した実践の蓄積があること
活動の課題
- 支援が属人的になりやすいこと
- 組織基盤が小さいこと
- 専門性を磨く必要があること
- 実践を支援モデルとして整理しきれていないこと
- 活動の認知がまだ十分ではないこと
活動を取り巻く機会
- 地域でのひきこもり支援の必要性が高まっていること
- 行政や支援機関との連携の可能性があること
- 啓発活動の関心が高まっている
想定されるリスク
- 団体規模の小ささによる負担の集中
- 困難事例における支援の長期化
- 社会課題の拡大による対応の難しさ

基本方針
1.尊重から始まる地域連携
行政や支援機関の役割や制約を理解・尊重しながら、民間としてできる実践を積み重ねていきます。
2.オーダーメイド型支援
すでに相談につながり、支援ニーズを把握している本人や家族に対し、状況に応じたオーダーメイド型の支援を行います。
3.地域支援の積極的な補完
制度や組織では対応しにくい部分を補い、地域の支援力全体を高めることを目指します。
4.実践から地域モデルへ
活動の実績と蓄積を地域に共有し、地域で活かせる支援の形へと整理していきます。
Nienteの価値観
尊重と対話
本人、家族、支援者、行政それぞれの立場や背景を尊重し、まず話を聞き、対話を通して関係を築きます。
当事者主体
本人不在で支援を進めず、納得やタイミングを大切にします。
家族(親)をくじかない
家族を責めず、まず安心して話せる関係づくりを大切にします。
関係を壊さない支援
正しさや正解を急ぐのではなく、関係が続くことを重視します。
学びと実践
前例や資源不足を理由に諦めず、小さく試しながら改善を続けます。
継続
やり続けることでしか見えない課題があり、開けない道があります。
専門性と当事者性
支援の専門性を磨きながら、当事者としての感覚や経験を大切にします。
地域へ還元
支援の中で得られた成功体験や学びを団体の中だけにとどめず、地域の知見として共有します。
行動指針
- まず話を聞く
- 親を責めない
- 無理に動かさない
- 関係を壊す支援をしない
- 「ウチではない」で終わらせない
- 他の支援機関を批判しない
- 押しつけない連携をする
- 小さく試し、振り返り、改善する
支援の原則
Nienteは、支援対象を限定したり、相談を拒否したりする団体ではありません。
相談に来てくれた本人や家族の声は、まず受け止めます。当団体だけで対応が難しい場合でも、その場で切り離すのではなく、本人や家族と一緒に解決策を考え、必要に応じて行政機関、医療機関、支援団体など信頼できる関係機関と連携します。
相談は受け止め、孤立したまま終わらせないことを基本姿勢とします。
重点施策
1.居場所の運営
当事者が安心して過ごせる居場所を継続的に運営します。そのため女子会と男子会を個別に運営します。
2.家族会の開催
家族が安心して話せる場を継続して開催します。家族の安心は共感だけでなく”解決”も必要と解釈しています。親の心配や気持ちを優先した解決ではなく、当事者性を生かした”本人の苦しさに寄り添った解決”を目指します。
3.ひきこもり支援ハンドブック勉強会
地域の初期対応力向上を目的とした勉強会を実施します。年4回開催し、対象者は地域の行政職員、ケアマネージャー、民生委員、福祉関係者など、地域全体の初期対応力向上を目指します。
また、“ケアする人のケア”を重視し、支援者の抱え込みや孤立を防止します。
4.居場所の次のステップ(自律支援)
主体的な社会参加につながる学びの場をつくります。具体的には自己理解の機会や、社会保障制度の勉強会を実施します。これらにより、本人たちの選択肢を増やし、主体的に生きれるようなサポートを行います。
自立支援ではなく”自律支援”と位置付けます。
Nienteの自律の定義:他者の意見に左右されず、しあわせに生きていたいと思える状態
3カ年計画
1年目|仮説を実践し、課題を可視化する
地域課題に対する仮説を実践しながら、関係機関との連携を深め、課題を整理します。
2年目|改善しながら連携を広げる
実践を振り返りながら内容を改善し、ケース共有や情報共有を通して支援の導線を検証します。
3年目|実践を整理し、地域で共有する
3年間の実践を整理し、地域で共有できる支援の形としてまとめます。

3年後に目指す状態
- 初期対応で関係を壊さない地域
- 居場所の次の段階がある地域
- 支援が特定団体に集中しない地域
- 地域全体で支援が続いていく仕組みがある状態
令和8年度 活動計画
3カ年計画の1年目として、地域課題に対する仮説を実践しながら、関係機関との連携を深めていきます。
居場所の運営
引き続き当事者が安心して過ごせる居場所を継続的に運営します。
家族会の開催
家族が安心して話せる場を継続して開催します。
ひきこもり支援ハンドブック勉強会
地域の初期対応力向上を目的とした勉強会を、年4回程度開催します。
居場所の次のステップ
主体的な社会参加につながる学びの場を、年4回程度開催します。
啓発活動
講演会や福岡ひきフェスを通じて、ひきこもり支援の理解を広げます。
関係機関との情報共有
活動の中で得られた知見や課題を、関係機関と共有します。1年目は福岡県ひきこもり地域支援センター、福岡市若者総合相談センターユースサポートhubへの情報提供を強化します。
この計画の位置づけ
この計画は、居場所と家族会を土台とした支援実践を通して、地域におけるひきこもり支援のあり方を検証する取り組みです。
実践から得られた知見を地域と共有しながら、持続可能な支援の形を地域の中で育てていくことを目指します。
当団体だけの成果にこだわらず、地域の支援力向上を図ります。
最後に
Nienteは、あくまで自助活動団体です。
そのため、団体の活動を無理に拡大することや、代表者個人に過度な負担がかかる形での運営は目指していません。
代表者自身の”自律”の発展と活動の継続、そして心身の健康を維持することを最優先にしています。それが、長く続く本当の意味での自助活動だと考えています。
そのため、今後の活動方針としては、活動回数を増やすことよりも、一つひとつの活動の質を高めることを重視していきます。
今後も無理のない活動を意識しながら、本人や家族に寄り添った実践を積み重ねていきます。
また、Nienteの活動は、地域に同じような取り組みが増えていくことを目指しています。支援が特定の団体に集中するのではなく、地域の中で相談先や居場所が広がっていくことが理想です。
そのため、6年後には春日市の中で、当団体以外にも安心して相談できる場所が生まれていることを一つの目標として、活動を続けていきたいと考えています。
Nienteの実践が、地域の中で新しい取り組みのきっかけとなり、支援の輪が少しずつ広がっていくことを願っています。
居場所から始まった小さな活動が、地域の支援の土台へと育っていくことを願いながら、これからも一歩ずつ活動を続けていきます。

